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引用(著作権法32条1項)

第三十二条(引用)

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。

公正な慣行

ECサイトのブログ等では、引用元のURL(アンカーテキストで良いでしょう。)、記事のタイトルや出典を記載するということはこの「慣行に合致する」といえるためには、必要となってくるでしょう。

Twitterスクショ事件の判決文を要約すると「ツイッターの規約に違反する方法での引用は公正な慣行に合致するものと認めることはできない」ということになります。つまり「YouTubeの規約やコンテンツIDに則した映画素材の引用は公正な慣行に合致する」というロジックが導きだされる。

【第477回】衝撃!スクショ引用ツイートに違法判決~表現の自由と著作権:「逃げ口上という言い方は良くないかもしれないけど、公正慣行というのは相当幅広く取れるんですよ」

正当な範囲内

【引用の必要性】
この辺りに関しては、引用の「必然性」(引用しなければ成り立たない)まで必要なんだ!!という人が法律の世界には結構いますが、実際は「この引用があれば、ブログの記事がよりおもしろくなる!!」とか「自分の説明の助けになって、より分かり易くなる!」という程度の必要性があれば足りるでしょう。

【量及び範囲が必要な範囲内か】
この要件についても、引用の量とか範囲が「必要最小限」でなければならないと主張する人もいます。しかし、実情を踏まえて考えればわかるように「最小限」である必然性はなく「必要な範囲」であれば良いと思います。

「必然性」と「必要最小限」はパロディ事件で示されたが、その5年後の「藤田嗣治事件」によって否定されています。つまり「引用する時は必然性があり必要最小限でなければならない」という理屈は5年という短い期間だけ一時的に有効だったものです。

藤田嗣治事件判決文より一部抜粋)あるいは引用に必然性があるかどうかは、著作物が著作者の自由な精神的活動の所産であることからすれば、多分に著作者の主観を考慮してせざるをえないことになり、これを判断基準として採用することは客観性に欠ける結論に到達する虞れがあり、相当とはいえない。また、控訴人が適法引用のもう一つの要件として主張する「最小必要限度の利用であること」は、その限度を著しく越える場合には、引用著作物の主体性、被引用著作物の付従性を失わせる場合があるという意味で、前述した主従関係の判断において考慮すれば足りることであつて、これをもつて別個の要件とすべき理由はない

【手段(引用方法)が適切か】

憲法 教科書のその先へ(月刊法学教室 2021年08月号)

「少なくとも、①原著作物とは異なる新たな作品を創造する目的のもと、②他人の著作物をその目的に必要な限度にとどまる態様において引用する場合においては、③著作権者の潜在的市場に重大な影響を与えるものでない限り、正当な範囲内の引用と考えることができる。」

「②必要性の認定にあたっては『息継ぎの空間』の設定により委縮効果の弊害を除去するという視点を踏まえ、裁判所が判断代置的に必要不可欠性を審査する必要はなく、利用者側の説明中に目的と引用との間に合理的関連性を見出すことができればそれで十分であると解すべきである。」

上記論文は『ハイスコアガール』事件との関係で執筆されたものであることもあり、上記①ないし③の要件は、パロディとは違って原著作物を改変しない前提で提示されたものかと思われる。

この点も含め、原著作物を借用しての表現活動に関しては、多種多様なものが考えられることから、結局のところ、フェアユースの法理のように、諸事情を比較衡量して考えるほかはないように思われる。そして、「引用」規定の解釈論(憲法適合的解釈)として行うことが可能であればそのようにするのがおんとうだろう。解釈では追いつかないとなれば、表現の自由を考慮した違法性阻却や適用違憲等の手法も考えられよう。

この関係で気になるのは、このように比較衡量を行うとした場合に、刑事罰を科すことが適当なのかどうかである。

「伝統的2要件」から「総合考慮」へ

パロディ事件」判決(最高裁、1980年)以降、適法な引用を判断するにあたっては「明瞭区分性」と「主従関係」の2要件は、現行法施工前の侵害行為を対象に旧著作権法の適用から導かれた要件であるため、現行条文との結びつきが不明瞭と批判され、昨今では著作権法の条文に立ち返り「総合考慮」する裁判例が増えている。「聖教グラフ事件」判決(東京地裁、2003年)、「美術鑑定証書事件」判決(知財高裁、2010年)などがあり、後者は、引用側に著作物性を不要とする裁判例としても議論の対象になっている。

2018年01月31日上野達弘(早稲田大学教授)「新2要件説」と「正当な目的」

「伝統的2要件」を適法引用の最終判断に用いるには”荷が重すぎる”ものの、「引用して利用することができる」の”引用”に当たるための要件と捉えたうえで、公正な慣行に合致するか、正当な範囲内かを判断する方法(「新2要件説」)や、”目的”が正当であることを要件とする考えなども、近年有力になっている。

2018年01月31日上野達弘(早稲田大学教授)今般の議論の状況から整理できる「要件」

「要件」をめぐる議論は収束していないが、現状では以下のように整理できる。

①公表された著作物であること②引用であり[(明瞭)区別性・主従関係]、正当な目的があること③公正な慣行④正当な範囲内 近時の裁判例では、④について「社会通念上合理的な範囲内」と示されており、権利者に与える経済的な影響も考慮される。 2018年01月31日上野達弘(早稲田大学教授)

「実務上の基準」

学説とは別に、実務上の基準を持つ方法が考えられる。「出版契約ハンドブック」(日本書籍出版協会)の7要件が代表的である。 ①公表②明瞭区分性③主従関係④必然性(必要性)⑤必要最小限度⑥改変禁止⑦出所の明示 2018年01月31日上野達弘(早稲田大学教授)

まとめ

引用を口実として「居直り侵害」や、引用の過剰な萎縮は共に望ましくない。引用の範囲の明確性を高められるよう取り組まねばならない。手段として、新たな立法やガイドラインの策定があるが、困難であれば、本件ディスカッションのように、権利者と利用者が集い「このあたりであればOK」とされるところを情報交換・言語化・共有し、その成果を将来に引き継ぐ方法が有用である。

2018年01月31日上野達弘(早稲田大学教授)「引用」の憲法適合的解釈

【画像】雑誌「法学教室 2021年8月号」 | 【PDF】2015.03.24 明治大学での講演 | 【PDF】講演のパワポ |

木下昌彦教授と前田健教授の共著論文「著作権法の憲法適合的解釈に向けて:ハイスコアガール事件が突き付ける課題とその克服」ジュリスト 2015年4月号(No.1478)

近年は、合憲限定解釈のようなドラスティックな解釈をおこなうというよりも、まず、法令の文言解釈に拘泥せず、「趣旨、目的、保護法益から」制約規範を「解釈」し、その「中で最上位規範である憲法が表現の自由を保障していることを考慮し」て、「法令の解釈において憲法を含む法体系に最も適合的なものを選ぶという体系的解釈」、すなわち、憲法適合的解釈をおこなうべきという主張が強調されるようになっております。特に、堀越事件という平成25年(2013)の最高裁判決はこのような判断手法を採用したものとされております。著作権法というのは、私の理解では、従来はかなり文言や文理というものを重視してきた解釈が行われてきたわけですけれども、(憲法の解釈権を持っている)最高裁は、特に憲法問題が関連するような条文の解釈については、単に文言だけではなく、その趣旨、目的、保護法益というものも含めた上で、さらに憲法の価値も含めた上で解釈すべきであるということを述べているわけです。

この正当な範囲内という文言は、大変抽象的で、民法 90 条などの規範的要件と呼ばれているものと同じようなものなわけです。民法 90 条では、公序良俗に反する事項を目的とする契約は無効になるということなのですが、ここで公序良俗というのは何かということが、憲法を踏まえて解釈されますように、ここで言う正当な範囲内というものも憲法を踏まえて解釈しなければならないというわけです。

ここでまた先ほどの最高裁の判決が出てくるのですけれども、明瞭区別性と主従関係性と、この二つを満たすということが正当な範囲内であるための必要十分な条件だという「二要件説」と言われるような理解も、従来は存在したわけです。実際、この判決自身は、もともと旧著権法に関するものなのですけれども、現行の著作権法の下でも、これに基づいた裁判例というのは、最近までは支配的でした。

この二要件説については、だいぶ昔から上野先生など初めとして、強い批判を浴びてきたわけです。裁判例も、もはやこの二要件説というものからは脱却する動きを最近は強めております。このスライドに示しました「美術鑑定書事件」という事件があるのですが、ここではアメリカのフェア・ユースにちょっと似ているのですけれども、総合考慮説という考え方が提示されました。この判決が出て以降、裁判例は、少なくとも二要件説にはもはや依拠していないと考えられます。この総合考慮によって正当な範囲内を判断するという考え方は、表現の自由との調整を可能にする出発点として、基本的には支持すべきであろうというふうに考えられます。

美術品鑑定証書引用事件(知財高裁 平成22年10月13日判決)2010年

【PDF】裁判所の判例 | 【PDF】シティユーワ法律事務所

知財高裁平成22年(ネ)第10052号事件、平成22年10月13日判決(原審:東京地裁平成20年(ワ)第31609号事件)

絵画の著作者Aの相続人が美術品の鑑定を業とする会社にAの制作した絵画の鑑定証書の作成を依頼し、鑑定業者が鑑定証書の作成に際し、鑑定証書に添付するために、絵画の縮小コピーを作成したことが、亡Aの著作権を侵害するとして鑑定業者に損害賠償を求めた事件である。原審は著作権侵害を認めたが、控訴審では知財高裁は、鑑定証書に添付するための縮小コピーは著作権法32条1項の「引用」にあたるとし、著作権侵害の成立を否定した。

この3年で4回の著作権法改正、いったいどこがどう変わったのか忘れられがちな改正内容を整理する

大胆に変わった平成30年改正。まず平成30年の、通常の著作権法改正内容から見ていくと、以下の4点が柱になる。

1)デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備(第30条の4、第47条の4、第47条の5等関係)

2)教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備(第35条等関係)

3)障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備(第37条関係)

4)アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等(第31条、第47条、第67条等関係)

1のポイントは、「柔軟な権利制限」という部分である。これまでも著作物利用の権利制限については、研究や技術開発に限って無許諾でできたのだが、目的が限定的すぎて使えないケースが多かったので、使いやすくしたということだ。

これは、日本でもフェアユースを導入したらどうかという議論の末に行われた改正だ。結果的にフェアユースという概念の導入は見送り、従来の権利制限という穴を大きく、というか、著作権者の権利を不当に害さないなら大抵のことはいいんじゃないか、みたいな方向性で調整した結果である。

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